投資初心者が新NISAで資産運用を始めた理由
SNSを開けば、「オルカン」「S&P500」といった単語が飛び交い、書店には新NISA関連の書籍が山積みにされている。
ニュース番組では、さも日本中がこの制度に熱狂し、誰もが当たり前のように資産運用を始めているかのようなトーンで語られる。
そんな光景を眺めるたび、私の胸には微かな焦燥感がこみ上げていた。「また乗り遅れているのではないか」「私だけが何もできていないのではないか」。
過去の後悔:かつての私が作った「幽霊口座」
実は、私には苦い経験がある。旧NISAが話題になった際、世間の波に押されるようにして証券口座を開設したのだ。
当時の自分にとっては、それが精一杯の「一歩」だった。しかし、その足はそこで止まった。いざ画面を前にすると、どの銘柄を選べばいいのか分からず、元本割れという得体の知れない恐怖が思考を停止させる。
「また時間があるときに」という自分への言い訳を繰り返しているうちに、月日は流れ、私の口座は中身が空っぽの、いわゆる「幽霊口座」と化した。
その後、株価の上昇や制度の変更が報じられるたび、「あの時、少しでも始めていれば」という後悔が、喉に刺さった小骨のように残り続けた。他人の投資成功談を聞くたびに、その焦りは静かに増幅していった。
「今度こそ」の扉は、驚くほど軽かった
新NISAが始まり、テレビで専門家が熱弁する姿を見て、私はふと決意した。今度こそ、過去の自分を越えたい。
スマートフォンの画面に向き合い、放置していた口座を再設定し、恐る恐る「積み立て設定」のボタンを押した。
拍子抜けするほどあっけなく、私の投資は始まった。かつての私が越えられなかった壁は、実は自分が作り上げた幻影に過ぎなかったのだ。
25%という数字が教えてくれた、不思議な安堵
そんな折、「新NISAの口座開設率は、実は国民の約25%程度」というニュースを目にした。
正直、驚いた。タイムラインや周囲の空気感から、「世の中のほとんどの人が始めている」と思い込んでいたからだ。しかし、現実は違っていた。残りの75%の人々は、日々の生活を守るだけで精一杯だったり、かつての私のように「手続きを先送りにしている」状態なのだ。
さらに言えば、その25%の中にも「作っただけで一度も動かしていない人」は含まれている。そう知ったとき、胸を衝いたのは、不思議な安堵感だった。
他人の「やってる感」より、自分の「一歩」を大切にする
私は時代の最先端を走る投資家ではない。ただ、過去の後悔を燃料に、ようやく重い腰を上げた不器用な生活者に過ぎない。
それでも、「幽霊口座」を眺めていた頃の私と比べれば、確実に前へ進んでいる。
世間の「みんなやってる」という同調圧力に流されるのではなく、過去の自分との約束を果たすために、少額でも未来への種をまき始めた。その事実だけで、今の自分を認めてあげてもいいのではないか。
25%という数字は、決して「少なすぎる数字」ではない。それぞれの人が、それぞれの迷いや生活の事情を抱えながら、自分の人生の手綱を握ろうともがいている証なのだと思う。
周りがどれだけ騒ごうと、私の積み立ての速度は変わらない。かつての後悔を、未来のささやかな安心へと変えていくために。私はこの小さな25%の一員として、自分の足跡を淡々と刻み続けていこうと思う。

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