NISAなんてやるんじゃなかった!投資で「心の平穏」を失った
「お金の不安を消したくて始めたはずなのに、以前よりもお金のことばかり考えて、心がすり減っている……」
もし今、あなたが新NISAの口座開設を終え、毎日のようにスマホの画面を見つめてはため息をついているなら、どうか安心してください。その息苦しさは、あなただけのものではありません。
投資の世界には「リスク許容度」という言葉があります。多くの本やネットの記事では、「いくらまでの損失に耐えられるか」という数字の話ばかりが語られます。
しかし、本当に大切なのは数字ではありません。「その投資が、あなたの心の平穏をどれだけ奪うか」という精神的なコストなのです。
69歳という年齢でNISAの扉を叩き、一時はスマホの数字に感情を完全に支配されてしまった私が、いかにしてその「呪縛」を解き、穏やかな日常を取り戻したのか。教科書には載っていない、一人のシニア投資家の心の格闘記をお届けします。
「貯金より投資」の言葉に背中を押されて
私の暮らしは、月約10万円の年金と、決して潤沢とは言えない手元の貯蓄で成り立っています。 スーパーで100円のキャベツを買うかどうかで悩む日々。節約に励めば励むほど、どこか心がジリジリと焦げていくような虚しさを感じていました。
そんな時に耳に飛び込んできたのが「新NISA」や「貯金から投資へ」という世間の声です。
「このまま指をくわえて貯金が減っていくのを待つより、少しでも未来を明るくしたい」
そんな切実な願いから、思い切って月2万円の積み立てを開始しました。それは私にとって、自分の老後に光を灯そうとした、勇気ある一歩でした。

一日何度もスマホを見る「数字の呪縛」と、剥き出しの恐怖
しかし、投資を始めた直後から、私の日常は一変してしまいました。 いわゆる「スマホ中毒」の始まりです。
朝起きてすぐ、昼食の前後、そして布団に入ってから。1日に何度も証券口座のアプリを開いては、1円単位で上下する評価額を目で追うようになってしまったのです。
画面の数字が数千円でもプラスになっていれば、その日1日はなんとなく機嫌よく過ごせます。しかし、ひとたび数千円のマイナス(含み損)に転じると、胸の奥がキュッと締め付けられ、まるで自分の人生そのものを否定されたかのような、暗い絶望感に襲われました。
「毎日スマホばっかり見ている。これが、私が望んだ豊かな老後なのだろうか?」
お金を増やして安心したかったはずなのに、実際には安心どころか、24時間お金の奴隷になっている。これこそが、投資初心者が最も陥りやすい「心の消耗」という落とし穴でした。生活を支える大切なお金を投じているからこそ、感情が剥き出しになってしまうのは当然のことだったのです。
2年間の葛藤で気づいた、相場というものの「呼吸」
そんな張り詰めた日々が変わるきっかけは、毎朝テレビで流れる経済番組を、少し引いた目線で見始めたことでした。
それまでは、株価の暴落や急騰のニュースを見るたびに心臓をバクバクさせていましたが、毎日見ているうちに、あることに気づきました。経済のプロたちが語る市場の動きは、まるで生き物の「呼吸」のようだったのです。
吸っては吐き、上がっては下がる。それは一時のパニックで終わるものではなく、社会が動いている証拠そのものでした。
NISAを始めて2年。私の資産も、緩やかな上下を繰り返しながら、少しずつ、しかし確実に土の中で根を張るように育っていました。
そのプロセスを肌で感じたとき、私の「脳と体」がようやく理解したのです。「今日下がっても、明日上がることもある。すべては波の一部なのだ」と。
そこから不思議なほど、スマホを見る回数が減っていきました。株価が気にならなくなったのです。この「気にならなくなる」という変化こそ、投資家として最も成熟した証(あかし)なのだと、今なら深く頷けます。
投資の本当の成功とは、資産の数字を「忘れる」こと
投資の極意を調べると「早く、多く、長期で」といった数学上の正解ばかりが目につきます。しかし、私たちシニアや個人投資家にとっての本当の成功とは、数字を増やすことそのものではありません。
増えたお金を使って、あるいは増えつつある安心感を背景に、「何を心配せずに、今を暮らせるか」にあります。
画面の中のデジタルな数字に支配されるのをやめ、窓辺で陽の光を浴びながら、穏やかにお茶を淹れる。そんな日常の愛おしい時間を取り戻したとき、あなたのNISAは本当の意味で大成功していると言えます。
もちろん、投資額が大きい人や、まだ始めて数ヶ月の方は、どうしても気になってしまうでしょう。それは仕方のないことです。無理に忘れようとする必要はありません。
ただ、相場が大きく動いたときこそ、一度スマホを裏返し、温かいお茶を一口飲んでみてください。
老後の投資で最も大切なのは、資産の利回りではなく「心」の利回りです。 これからも、一喜一憂しない「心地よい鈍感力」を最大の武器に、自分のペースで、穏やかな未来へ向かって歩んでいきましょう。

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