9000万人全員が投資家?ニュースの裏側にある「延べ人数」の仕組み
東京・名古屋・福岡・札幌の四つの証券取引所は2025年度の個人株主数が前年度比839万人増の9198万人に達し、12年連続で増加、史上初めて9000万人を突破したと発表しました。
このニュースを見て「日本の人口の半分以上が株を始めたのか?」と驚かれた方も多いかもしれません。しかし、実はこの「9198万人」という数字は、「日本国内で株を持っている実人数」ではありません。
今回は、誤解されやすいこの統計の裏側と、なぜこれほどまでに投資が日本社会に浸透しているのか、その真実を分かりやすく解説します。
「9198万人」の正体とは?
この調査で発表されている数字は、「延べ人数」です。
これは「AさんがB社の株を持ち、同時にC社の株も持っている」場合、それぞれで1人分としてカウントする仕組みです。
日本の総人口が約1億2304万人(2025年10月1日時点)であるのに対し、投資家が一人で平均して5~6社の株を掛け持ちしているとすれば、実際の個人投資家の人数は1500万人~1700万人前後と考えられます。
つまり、日本国民のほとんどが株を始めたわけではなく、「投資をしている人たちが、より多くの会社の株を保有するようになった」というのがこの統計の正しい読み方なのです。

個人投資家が急増!投資は「特別なもの」から「日常」へ
では、なぜこれほどまでに投資への参加意欲が高まっているのでしょうか。
かつては「株式投資=一部の資産家がするもの」というイメージが強かったかもしれませんが、今やその常識は過去のものとなりました。
その裏側にある二つの大きな要因を紐解いていきましょう。
1. 新NISAがもたらした「投資への心理的ハードル」の低下
今回の個人株主急増の大きな立役者の一つが、「新NISA」の普及です。2025年12月末時点で約2826万口座に達するこの制度が支持された理由は、シンプルに「投資を始めやすく、続けやすい仕組み」になったからです。
- 非課税枠の恒久化: 利益に対してかかる約20%の税金が一生涯非課税になることは、長期的な資産形成において圧倒的なメリットです。
- 投資環境の整備: 制度が使いやすくなったことで、これまで投資に興味はあったものの「何から始めればいいかわからない」「税金の手続きが面倒そう」と躊躇していた層が、一気に市場へ参入しました。
国を挙げた「貯蓄から投資へ」というスローガンが、ようやく現実の行動として結実したと言えるでしょう。
2. 「株式分割」で身近になった憧れの銘柄
もう一つの重要な要因が、企業側が行う「株式分割」の急増です。
これまでは「投資をしてみたいけれど、1単元(100株)買うのに何十万円も必要……」と諦めていた企業も少なくありませんでした。そこで多くの企業が導入したのが、1株を複数に分けて株価を抑える「株式分割」です。
- 投資単位の引き下げ: 株価が下がることで、少ない資金でも有名企業や人気企業の株主になれるようになりました。
- 長期的な株主の増加: 日本製鉄、イオン、伊藤忠商事といった著名企業が積極的に分割を行ったことで、多くの個人投資家が新規参入しました。東証の分析によると、分割を行った企業はその後数年にわたって株主数が増え続ける傾向にあるそうです。
投資金額も過去最高へ
今回の発表では、個人投資家が保有する株式の金額も210兆7304億円と過去最高を記録しました。
これは、単に「延べ人数」が増えただけでなく、個人が積極的に資産を運用に回している証拠です。
日本経済全体で見れば、依然として外国法人の影響力は大きいものの、個人の存在感は着実に高まっています。
まとめ:これからの資産形成は「賢く、長く」
9000万人という数字は、単なる統計ではありません。多くの日本人が「自分の資産は自分で守り、育てる」という意識にシフトしたことを示す象徴的な数字です。
新NISAという「舞台」が整い、株式分割によって「参加資格」が広がった今、投資はより一層身近な存在になっています。
これから投資を検討している方も、すでに始めている方も、この波を活かして、無理のない範囲で長期的な視点での資産形成を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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